IPCC、第6次評価報告書WG1を発表! 止まらない温暖化に警鐘

2021.08.23 Update

気候変動

IPCC、第6次評価報告書WG1を発表! 止まらない温暖化に警鐘

8月9日、IPCCが約7年ぶりに第6次評価報告書WG1を発表しました。地球温暖化の厳しい現状が明らかになり、脱炭素化の一層の加速が求められています。

温暖化は人間活動に起因と断言

今回発表された、第6次評価報告書(AR6)の自然科学的根拠を扱う第1作業部会(WG1)では「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とされました。つまり、地球温暖化の要因は人間活動であると断言したのです。

前回の2013年の第5次評価報告書(AR5)では、温暖化の要因は人間活動であった可能性は95%以上とされ、明言は避けられてきました。

今回のWG1報告書では、自然活動のみのケースと、加えて人間活動があるケースのシミュレーションが示されました。下図の緑色の箇所が自然活動のみオレンジ色の箇所が自然活動と人間活動がある場合の、世界平均気温の変化です。

(画像出典:環境省『– 1 – 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書(自然科学的)』)

このグラフから、人間活動がある方が気温が大きく上昇していることが読み取れます。

今世紀末2℃以上上昇の厳しいシナリオ

今後数十年間で温室効果ガスが大幅に減少しなければ、2100年までの気温上昇が1.5~2℃を超えるという非常に厳しい見通しも示しました。AR6では気温上昇のシナリオを5パターンとしましたが、このうちの3シナリオにおいて2℃を超えると予測されています。

(画像出典:環境省『– 1 – 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書 第 1 作業部会報告書(自然科学的)』)

さらに、海面上昇については、海洋深部の温暖化や氷床の融解が続くため、数百年から数千年にわたって続くとされました。

今さら聞けない、IPCCとは?

IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)とは、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって1988年に設立された国際機関です。

地球規模で気候変動が起こっているとするIPCCの報告書は、国連や日本を含む各国から信頼されています。その理由は、多くの国から何百名もの気候の専門家が参加し、1万本を超える論文を引用し、レビューを繰り返していることに加え、それらを公開しているためです。

IPCCは、5~7年おきに評価報告書(Assessment Report)を発表しており、2013~2014年の第5次評価報告書(AR5)には、800名超の科学者が参加し、そのうち30%が発展途上国からの参加でした。

2018年には、ARとは異なる不定期の「1.5℃特別報告書」を発表し、現在のまま地球温暖化が進めば、2030~2050年には気温上昇が1.5℃になると警鐘を鳴らしました。

今年11月のCOP26にも影響か

今回のWG1報告書は、今年11月に英国で予定されているCOP26(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)へも影響を与えると見られています。今後、影響や適応・脆弱性に関するWG2報告書、緩和策に関するWG3報告書を経て、統合報告書が2022年9月のIPCC総会に提出される予定です。これらの報告書にも注目していきたいと思います。

 

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook