内閣府の「スマートシティガイドブック」とスマートシティ会津若松の先駆的な取り組み

2021.05.21 Update

スマートシティ 官公庁

内閣府の「スマートシティガイドブック」とスマートシティ会津若松の先駆的な取り組み

2021年1月から3月にかけて、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が合同でスマートシティの意義や導入効果、進め方などについてガイドブックにとりまとめる検討を進めてきました。スマートシティは、デジタル化によって人口減少や高齢化といったさまざまな社会課題を解決する可能性をもつとされています。政府は、このガイドブックによってスマートシティを目指す地域を増やし、Sciety5.0やSDGsの達成につなげる狙いがあります。

4月9日には、「スマートシティガイドブック」第1版(ver.1.00)が更新されました。1月に公表された初版では、スマートシティの基本コンセプトや類型、進め方といった基礎知識が詳しく解説されました。続く第1版では、交通・モビリティや防災、環境・エネルギーといった「スマートシティを通じて導入される主なサービス」について網羅されています。「スマートシティに関連する施策・参考資料」「用語集」など、実務にあたって必要となる情報もわかりやすく整理されました。

(出典:内閣府『スマートシティガイドブック(概要版)』)

10年の節目迎えた「スマートシティ会津若松」

さて、今回はスマートシティ・ガイドブック分科会でもピックアップされた「スマートシティ会津若松」のケースについて紹介します。

福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」とは、東日本大震災からの復興にあたり、人口減少や少子高齢化などの課題をICTを活用して解決を目指す官民連携のプロジェクトとして2011年にスタートしました。その先駆的な取り組みは、開始から10年目の節目となる今年、大きな注目を集めています。

スマートシティ会津若松は、観光や医療、流通やICTなどの各産業分野や会津大学、県・市から構成されるスマートシティ会津若松推進会議によってリードされました。取り組みの三本柱は、「地域活力の向上:地域経済の活性化」「市民生活の利便性向上:安心して快適に生活できるまちづくり」「市民との情報共有の促進:『まちの見える化』の実現」です。

「スマートシティ会津若松」ではICTは課題解決のための手段であると明確に位置づけ、多くの分野でICTの活用に取り組んでいます。交通や教育だけでなく、エネルギーや観光、商工といった地域の幅広い分野にICTを組み入れ、交流人口の拡大や人口流出の歯止めに力を注いでいる点が特徴的です。

 

多様なICTの活用事例の中から、医療と農業振興のケースについて紹介します。

会津若松市にとって深刻な問題である人口減少。1995年の137,000人をピークに、近年では毎年1,000人のペースで減少が続いています。また、人口における65歳以上の割合も全国平均を上回ることが予想されており、医療サービスの充実は喫緊の課題でした。

そこで「スマートシティ会津若松」では、ICTを活用したサービスの展開を始めました。例えば、スマートフォンで母子健康手帳の情報が確認できるサービスや、自宅にいながら遠隔で医師の診療を受けられるオンライン診療の取り組みなどです。

また、農業振興としてデータ分析とICTによるスマートアグリも推進しています。センサーで土中の水分量や肥料の濃度を測る養液土耕システムや自動で田んぼに水を流す水田水管理システムなど、労働時間の削減や品質の向上に大きく貢献しています。

国家戦略特区のスーパーシティ構想を目指す

実は、スマートシティ会津若松はこの10年間の取り組みで得られたノウハウによって、さらなるステップアップを目指しています。

4月16日には、政府が掲げる「スーパーシティ」構想に応募を行ったことを表明しました。「スーパーシティ」構想とは、分野横断的にAIなどを導入することでサービスの品質向上を目指すものです。

(出典:会津若松市)

会津若松市は、これまでの取り組みの中には、遠隔医療など法規制によって実現が難しいものがあったとしています。国家戦略特区として地域限定的に規制緩和が適用される「スーパーシティ」構想に選定されれば、より発展的な取り組みができることが期待されます。

スマートシティの先駆者ともいえる「スマートシティ会津若松」は、地方自治体におけるスマート化を力強く牽引しています。

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook