江ノ島にスマート「海の家」が登場、IoTから農業の六次産業化まで

2018.08.20 Update

スマートシティ IoT

江ノ島にスマート「海の家」が登場、IoTから農業の六次産業化まで

スマートシティというと大きな規模ですが、ちょっとした施設を先進的な技術でスマート化していくということも、大きな意味があります。

今回、ご紹介するのは、今年の夏、江ノ島の浜辺に登場した海の家、Sky Dreamです。この施設、普通の海の家のように見えますが、実はITのショーケースになっているのです。

AIやIoTが活躍

Sky Dreamは、江ノ島の東片瀬浜にある海の家です。見た目は、ちょっといい感じの海の家、といったところでしょうか。くつろげるスペース、料理や飲み物を提供するキッチン、ロッカールームやシャワーなどが完備されており、一般のお客様は普通の海の家だと思うのではないでしょうか。

唯一、違う雰囲気を出しているのが、奥にあるワーキングスペースです。ここで、何やらパソコンに向かっている人が数人。海まで来て仕事? なのでしょうか。実は、この海の家、シェアオフィスの機能も備えているのです。

まず、Sky Dreamにはどのような技術が導入されているのか、そこからご紹介します。

客席にあるメニュー表には、QRコードがついています。このコードを使って、料理や飲み物の注文から支払いまでができるのです。料理が用意できれば、テーブル番号をアナウンスしてくれるので、並ぶ必要も財布も必要ありません。

一方、キッチンですが、厨房内には温度センサーがあり、従業員は心拍数などを測定するウェアラブル端末を装着しています。実は、厨房の環境とストレスの関係を測定し、より快適な厨房にしていくためのデータを集めているのです。

在庫管理にはAIが使われています。例えば、オリジナルメニューの阿波地鶏の唐揚げや秋田ポークのソーセージなど、在庫が減ってくると自動的に発注するシステムなのです。そして、どのタイミングで発注すればいいか、といったことを学習しています。シャワールームやロッカーにはIoTセンサーが導入されています。シャワールームが使用中かどうか、ロッカー内に忘れ物がないかどうかが、わかるようになっています。シェアオフィスに不可欠なWi-Fiも用意されていますし、ITのハードウェアが海辺でどのくらいの耐久性を持つか、といったことの実証も行われています。

農業六次産業化から働き方改革まで

Sky Dreamの特色は、ITだけではありません。

先ほど登場した、阿波地鶏と秋田ポークがなぜあるのか。実は、この海の家を運営する会社、セカンドファクトリーは、IT企業でありながら、農業の六次産業化のソリューションとして、徳島県や秋田県では、食品加工工場やレストランなどを併設した施設を運営しています。

徳島県ではThe Naruto Baseという施設を展開しています。食品加工工場では主に、中間加工品を製造しています。阿波地鶏だけではなく、鳴門金時など地元の特産品をはじめ、トマトなど多様な農産物が加工されています。加工工場のいいところのひとつは、品質に問題がなくても大きさなどで規格外となってしまった農産物を利用できること。

そして、中間加工品は、主に飲食店に提供されています。飲食店では、営業時間外に仕込みを行っていますが、安定した品質のトマトソースなどを使うことで、この手間を削減することができます。こうしたことが、飲食店の労働環境の改善にもつながっているということです。

一方、販売先を個人消費者ではなく飲食店とすることで、食品加工工場側も安定した売上が見込めます。

そして、ここでシェアオフィスを展開することも、新しい働き方の提案となっています。テレワークやサテライトオフィスなどが提唱されていますが、季節によってはリゾート地で仕事をするのもいいでしょう。ここでは海辺を見ながら仕事をし、気分転換に泳ぐこともできます。

現場主義のITソリューション

セカンドファクトリーが海の家に関わり始めたのは、2013年からです。最初は、唐揚げの販売から始めました。

理由は、飲食店のシステム開発にあたって、現場を知る必要を感じたからだということです。開発にあたって、実際に飲食店をやってみるというときに、海の家は期間限定ということもあり、ちょうどいいサイトということでした。

その後、運営は本格的なものとなり、さまざまな企業が参加し、実証試験を行うようになりました。そして、Sky DreamはITのショーケースともいえる施設になっていったということです。 経営の面では、利益は出ていないとのことですが、それでも、展示会に出展するよりははるかに低コストで効果的だということでした。

スマート海の家ですが、ここに導入されているソリューションは、必ずしもITだけではありません。むしろ、ITありきではなく、現場に必要なもの、という視点から、料理やワークスペースまで導入されている、ということでしょう。

スマートシティも、規模は異なりますが、やはりITだけではない、住む人の視点に立ったソリューションを考えていく必要がありそうです。

なお、Sky Dreamは8月いっぱい営業をしているということです。もし間に合うようでしたら、一度足を運んでみてもいいでしょう。

 

 

Text by 本橋恵一(エネルギービジネスデザイン事務所)