100%再生可能エネルギーを目指すイニシアチブ:RE100①

2018.09.20 Update

再エネ RE100

100%再生可能エネルギーを目指すイニシアチブ:RE100①

RE100とは、世界の100以上の影響力のある会社が、「100%再生可能エネルギーの利用」を目標に掲げる国際的なイニシアチブです。RE100はイギリスに拠点を置く国際NGO団体の「The Climate Change」が同じく国際NGO団体である「CDP」と提携し開始されました。RE100の加盟企業は、ある特定の年までに電力を100%再生可能エネルギーにするという目標を掲げています。(注1)

加盟企業には、例えばIKEAやH&M、更にはアップルやマイクロソフトといった世界的に有名な大企業があります。日本企業ではリコー、積水ハウス、アスクル、大和ハウス、ワタミ、イオン、城南信用金庫、丸井グループ、富士通、エンビプロ・ホールディングスの10社(2018年8月現在)が加盟しています。

このように、RE100とは世界有数の大企業が参加する100%再生可能エネルギーを目指すイ二シアチブです。

参加条件は、「100%再生可能エネルギーの宣言」と「報告書の提出」

RE100への参加条件は2つあります。

まず、加盟企業は「100%再生可能エネルギーで行うことへの宣言」という参加条件を満たさなければなりません。目標達成のために、加盟企業は必ずグローバルな事業展開全てにおいて、100%再生可能エネルギーにしなければならないと定められています。

また、再生可能エネルギー100%を実現するための手段として、RE100では以下の選択肢をあげています。各会社は以下から手段を選び、目標達成を目指すことになります。

・加盟企業が所有する施設での再生可能エネルギーの生産

・市場において発電事業者やサプライヤーから再生可能エネルギーの購入

次に、「報告書の提出を通じた進捗状況の報告」も参加条件の一つとされています。

具体的には、進捗状況を「RE100 Reporting Spreadsheet」もしくは「CDP’s Climate Change questionnaire」を通じて毎年RE100事務局に知らせる必要があります。再生可能エネルギーの消費や生産については必ず信頼性及び透明性の要件を満たす必要があり、これは第三者により検証されます。(注2)

RE100の算定・報告基準である「GHGプロトコル」

  RE100の温室効果ガス排出量の算定・報告は「GHGプロトコル」という基準に基づいています。

「GHGプロトコル」は、1998年にWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な発展のための世界経済人会議)とWRI(World Resources Institute:世界資源研究所)を中心とした国際的な組織であるGHGプロトコルイニシアチブにより作成されました。GHGプロトコルイニシアチブは、世界で認められた温室効果ガス排出量の算定と報告の基準を開発し、利用を推進することを目指しています。(注3)

GHGプロトコルは、温室効果ガスの排出に関して、以下のスコープ1~3に分類しています(下図参考)。

(出典:環境省)

スコープ1に関しては、事業者自体に起因する温室効果ガスの直接排出、それに対してスコープ2に関しては、他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に起因する温室効果ガスの間接排出となります。そしてスコープ3は、スコープ1及び2以外の間接排出であり、事業者の活動に関連する他社に起因する排出です。

上記で説明した「スコープ3」基準は2011年に正式発行されました。スコープ3は従来の各算定・報告制度においては算定対象外であったのですが、近年これを算定対象とする動きがみられています。

スコープ3を算定対象とすることで、サプライチェーン全体で温室効果ガスの排出量がどの段階で大きく、削減できる可能性が高いのかを明確にすることができます。更に、事業者が温室効果ガスの削減を効率的に行う事で、透明性を高め競争力を強めていくことが見込まれています。(注4)

RE100達成の手段としての非化石証書の課題

上記のような基準に沿ったうえで、企業がRE100を達成するために考えられる施策としては、使用電力の再エネへの転換(自家発電、電気事業者との契約など)、環境価値取引を行う、などが挙げられます。

環境価値取引について、日本で利用可能な手段には、グリーン電力証書や再エネJクレジットなどがありますが、近年、新たに「非化石証書」という手段が注目されています。(注5)

非化石証書とは、FIT電気の二酸化炭素の排出がゼロといった環境価値を証書という形態にしたものです。

非化石価値取引市場は主に以下の目的で創設されました。(注6)

・「エネルギー供給構造高度化法」(注7)における非化石電源比率の目標実現の補助となる

・需要家にとっての選択肢が増える

・国民のFIT賦課金負担を軽減する

今年には、CDPの気候変動質問書に対する報告において、非化石証書が公式に認められました。(注8) 一方で「RE100」では、今後非化石証書の有効性が正式な手続きの下、判断される模様です。その背景には、「RE100」が重要視する、企業が調達する電力の発電設備の情報を、非化石証書は伴っていないという事実があります。また、そのような背景から、もし「RE100」で公認されたとしても、各企業の経営ポリシーによっては、この非化石証書が積極的に 採用されるかどうかは分からない状況です。

そこで、次回はこのような課題に対応した、トレーサビリティ(追跡可能性)の高い新たな環境価値取引について、探っていきたいと思います。

 

<脚注>

1.RE100 http://there100.org/re100

2.Going 100% http://there100.org/going-100

3.環境省「事業者からの温室効果ガス排出量算定方法ガイドライン 」2003年 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/santeiho/guide/pdf1_6/mat_01-1.pdf

4.環境省「サプライチェーン排出量とは」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html

5.CDP事務局 「パリ協定が目指す社会を本気で達成するために We Mean Business*を中心とした 投資家と企業のこれから」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/dms_trends/seminar2017_005.pdf

6.資源エネルギー庁「非化石価値取引市場について」2017年 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/denryoku_gas_kihon/seido_kento/pdf/015_04_00.pdf

7.エネルギー供給構造高度化法は、エネルギーの安定供給・環境負荷の低減といった観点から、電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対し、非化石エネルギー源の利用拡大・化石エネルギー原料の有効利用を促進することを目的としている

8.みずほ情報総研「非化石証書 CDPで報告可能に」2018年 https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/2018/kankyo0322.html

 

(文:スマートシティニュース編集部 篠原)