新たな資金調達の手段「グリーンボンド」とは? 自治体も続々発行、即日完売も

2022.04.26 Update

ESG投資 グリーンボンド グリーンプロジェクト

新たな資金調達の手段「グリーンボンド」とは? 自治体も続々発行、即日完売も

東京都をはじめ、神奈川県や福岡市などの自治体も発行している「グリーンボンド」。そもそもグリーンボンドとは何か、グリーンボンドを発行するメリットなどについて、わかりやすくご説明します。

「グリーンボンド」とは

グリーンボンドとは、地方自治体や企業などがグリーンプロジェクトのために必要な資金を調達するために発行する債権(ボンド)のことを指します。具体的には(1)調達資金の使途がグリーンプロジェクトに限定されること、(2)調達資金が確実に追跡管理されること、(3)それらについて発行後のレポーティングを通じ透明性が確保されることーーの3点が条件とされています。

環境省が2020年3月に改訂した「グリーンボンドガイドライン2020年版」によると、グリーンボンドによって調達される資金は『明確な環境改善効果をもたらすグリーンプロジェクトに充当されるべき』とされています。対象となるグリーンプロジェクトの一例としては、国内や海外の再生可能エネルギープロジェクトや、エネルギー効率の向上に関するもの、気候変動への適応、クリーン輸送などが挙げられています。

地方自治体によるグリーンボンドの発行事例

国内では、2017年に東京都が地方自治体として初めてグリーンボンドを発行しました。五輪関連施設の環境対策、スマートエネルギー都市づくりなどの使途で、機関投資家向けに50億円の資金調達に成功しています。

東京都はその後も多くのグリーンボンドを発行し、個人投資家向けの外貨(豪ドル、米ドル)による債券も発行しています。

続く2020年には、神奈川県が機関投資家向けに「神奈川県水防災戦略」における河川・海岸・砂防の豪雨や台風などへの対策資金として50億円を調達。

今年1月には、福岡市が、再エネや省エネ設備を組み込んだ区役所庁舎の建て替えや、クリーン輸送に役立つ地下鉄の改良工事などで、同じく機関投資家向けの50億円のグリーンボンドを発行しました。これは即日で完売し、調達金額を大きく上回る798億円の応募があったとのことです。

さらに、今年に入って三重県長野県などもグリーンボンドの発行を始めています。

グリーンボンドの発行と投資の双方にメリット

グリーンボンドを発行することによるメリットとしては、ESG(環境・社会・統治)に配慮した事業運営を行っていることを投資家に広くアピールできるということが挙げられます。また、環境に対する意識の高まりから、福岡市の事例に象徴されるように資金が集まりやすいこともメリットの1つだと言えるでしょう。

一方で、グリーンボンドへの投資にもメリットがあると考えられています。機関投資家の中には、ESGに関する投資を一定の割合行うことをコミットした投資家もいます。透明性の高いグリーンボンドに投資することは、投資家自身の評価を向上させることにもつながると考えられているのです。

環境を改善するアクションに対する資金の動きは、今後も大きくなっていくと予想されます。こうした資金の流れには、もちろん地方自治体も含まれています。環境をよりよくすると同時に、社会課題の解決につながる取り組みの多様化が期待されます。

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook