CDP2018、スコアを発表、日本企業のAランクは25社が取得

2019.02.08 Update

CDP

CDP2018、スコアを発表、日本企業のAランクは25社が取得

1月22日、英国に本部を置く非営利の国際環境情報開示プラットフォームであるCDPが、2018年の評価結果を公表しました。

CDPは全世界の6800社以上の企業を対象に、地球環境問題に対する取組みの情報開示を評価しており、「A」から「D-」までランク付けしています。また、部門は「気候変動」に加えて、「水の安全」と「森林」の3つがあります。

まず、CDPについて説明しておきます。CDPとは、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトという以前の名称に由来したことからもわかるように、企業に、環境問題への取組みなど、「非財務情報の公開」を促進する取組みを行っています。

実際に、総資産総額87兆ドルにおよぶ機関投資家と協働しており、2018年には世界全体の時価総額の55%相当を占める7000社以上がCDPを通じて環境情報を公開しているということです。

すなわち、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資にあたって、機関投資家が利用する情報になっているということです。

また、今回から、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と連携した質問項目も増えました。その対応のため、今年は公表時期が例年よりも遅れたということです。

評価方法は、対象となる企業に対して、調査票を送付し、回答を分析するというもので、透明性、目標設定、リスク、リーダーシップなどさまざまな内容を指標に基づいています。これにより、「A」から「D-」までの評価を行うということです。

今回は、全世界で6800社以上が回答しました。そのうち、Aの評価を得た企業はどのくらいあったか。

気候変動では、126社がA評価で、うち20社が日本企業でした。水の安全では、27社がA評価で、うち8社が日本企業、森林では7社がA評価でうち日本企業が1社でした。

水や森林では企業数が少なくなっていますが、これは対象となる企業が少ないことによります。逆に言えば、気候変動はほとんどの企業が対象になっているともいえます。

表1は、A評価を得た日本企業のリストです。

表1

日本企業については、約500社に調査票を送付し、約59%の回答率だったということです。また、今回から回答を評価するのも有料としたにもかかわらず、回答率が上昇しているのは、企業にとってもCDPの評価が機関投資家に提供する情報として有用なものだという認識が広まっているからではないか、ということでした。

世界全体で見ると、日本企業がA評価を取得する割合は高くなっています。とはいえ、4割以上の企業が回答していないことから、日本企業の取組みは二極化しているのではないか、という分析もしています。

図1は、日本企業の評価の分布を示したものです。A-という評価の企業も少なくありません。こうした企業はあと一歩ということです。

図1

 一方、DやD-といった企業も目立ちます。こうした企業の多くは、とりあえず回答し、情報開示に取り組み始めた企業ではないかといいます。以前であれば、環境保全の取組みが十分ではないから回答しない、という姿勢だったものが、十分ではなくても回答することが評価につながる、という考え方に変化してきたのかもしれません。

また、A評価取得の必要条件として、トップのコミットメントが求められるということは、記者発表において事務局が強調していたことです。

そうしたこともあって、同じ日に行われた報告会では、A評価を取得した企業の社長などの役員がスピーチをしました。写真は、この日、スピーチを行った、A評価の企業の方々です。

以下、報告会におけるスピーチをいくつか紹介します。

SOMPOホールディングス、グループCBO、青木潔氏「損保にとって、昨年は自然災害が多く、過去最大の1兆円を支払う見込み。気候変動は経営レベルでもトップレベルの課題。しかし、リスクだけではなくビジネスの機会ともとらえている。気候インデックスを通じた東南アジアの干ばつ保証や、再生可能エネルギー投資の保険にも取り組む」

積水ハウス、常務執行役員、石田健一氏「2013年にゼロエネルギーハウスを商品化し、2018年にはこれが78%となっている。この割合は世界一。RE100に加盟し、昨年末はCOP24にも参加した。世界の気候変動問題に対する本気度を感じている」

ソニー、執行役員常務、神戸司郎氏「環境負荷低減のため、2050年に向けたRoad to Zeroを策定し、現在は2020年の中間目標に取り組んでいる。2040年には再エネ100%にするが、GHGを多量に排出する半導体事業も多いため、期待されている。再エネ事業の拡大と低コスト化にも取り組みたい」

富士通、執行役員専務、吉田英範氏「お客様のパートナーとしてデジタル技術でともに社会問題を解決したい。CO2ゼロに向けて、データセンターの省エネや再エネ利用、お客様の太陽光発電や水力発電、風力発電のAIによる保守などにも取り組む」

戸田建設、代表取締役社長、今井雅則氏「オフィスや工事でのCO2削減やZEBの建設に取り組んでいる。CDPへの回答を通じて社員の意識を高め、将来に向かう。RE100にも加盟し、ビジネスチャンス+社会への貢献として、浮体式養生風力発電もつくる。

丸井グループ、代表取締役社長、青井浩氏「当社のCO2の8割が電力由来。RE100を進める。現在、新宿の丸井が再エネ100%。今後、670万人のエポスカードの会員に再エネ100%の電気を勧めたい」

アサヒグループホールディングス、代表取締役社長兼CEO、小路明善氏「2050年にCO2ゼロにする。また、スコープ1,2だけではなくバリューチェーンを含むスコープ3にも取組み、2030年にはCO2を30%削減する。SBT(科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標の設定)の承認も得ている。再エネの積極的な利用を進めており、スーパードライの350ml缶とギフトセットは再エネ100%となっている」

CDPでは、2019年の調査票は2月に送付し、6月から7月にかけて回収する予定ということです。そして、秋には発表会も予定しています。

また、春には、ワークショップも予定しており、CDPの活用を通じて、A-だった企業の役員を巻き込むような取組みも行っていくということです。

 

エネルギービジネスデザイン事務所 本橋恵一