韓国・済州島のスマートアイランド計画

2018.06.06 Update

再エネ スマートシティ アジア

韓国・済州島のスマートアイランド計画

再生可能エネルギー100%というと、どうしても北欧の島など遠い話のように聞こえてくるのではないでしょうか。しかし、隣の韓国では、済州島を再エネ100%にする計画が進んでいます。2030年には、電気自動車100%とあわせて実現していくということです。

済州島特別自治区と韓国電力公社が進めるこのプロジェクトは、カーボン・フリー・アイランド(CFI)計画とよばれています。

済州島CFIの背景

済州島は韓国においては有数の観光地です。広さは約1800km2あり、定住人口はわずか66万人程度ですが、観光客は年間約1580万人もいます。観光地であるがゆえに、半島に先んじてクリーンな島にしたい、という想いがあるようです。

一方、済州島の電源構成ですが、現在の主力は59万kWの火力発電所と40万kWの半島につながる海底送電線、そして約40万kWの再生可能エネルギーです。一方、ピークは92万kWで、再エネがなくても供給可能な状況です。

また、済州島はスマートグリッドの実証フィールドともなってきました。これまで168社が5つサイトで実証事業を行っています。また、済州島の南西にある、人口約280人の加波島で、再エネと蓄電池によるマイクログリッドの実証も行っており、6日間、ディーゼル発電機を稼働させずに過ごした実績を残しています。この経験をスケールアップさせたものが、済州島のCFI計画ということになります。

CFIの電源構成

では、2030年の電源構成はどのように描かれているのでしょうか。

まず、再生可能エネルギーですが、これは430万kWになるということです。このうち約190万kWが洋上風力になるということです。もちろん、再エネの出力は天候に左右されるので、現在の火力発電所はバックアップ電源として運用されます。さらに海底送電線を60万kWに増強し、余剰の電気を半島に送る一方、不足すれば供給を受けることも可能です。無理はしないということですが、その上で、どこまで火力発電を運転しないですむのかが、ポイントになってくるでしょう。

EVは43万台

再エネの電気を調整する役割を期待されているのが、電気自動車(EV)です。2017年末には島内で2万9000台の電気自動車が走っていると見込まれていますが、2030年には43万台、100%EVにするということです。これは、2020年に日本全体で走っている全EVの台数に近い数字です。EVが普及すれば、再エネの余剰な電気を吸収することができ、系統の安定化に寄与します。

一方、EV用充電器の普及も欠かせません。急速充電器を含む公共の充電設備は7.5万台の設置を見込んでいます。日本では現在、急速充電器に限ってはおよそ7000台が導入された状況です。

EVを蓄電池として使うためには、電気を系統に戻すことも必要です。これをV2G(ヴィークル・トゥー・グリッド)とよんでいます。このV2Gを前提とした駐車ビルの建設も検討しているということです。これだけで、巨大な蓄電池のインフラが整備されることになります。

この他にも、定置型蓄電池やスマートメーターの普及も予定されています。特にスマートメーターは今年中には38万軒すべてに設置されるということです。

CFIの投資額

気になるのは、CFI計画の投資額です。これは日本円にして約1兆5000億円になります。大半は、EV関連の投資になり、また民間からの投資を呼びこむことになっています。

韓国電力公社と済州島政府の役割は、投資環境を整えることと、送配電網の整備ということになります。再エネを受け入れるため、韓国電力公社は2017年には約90億円、2018年には約100億円の投資を行うということです。

民間からの投資という点では、日本企業も参加する資格はあります。すでに、昨年秋には、韓国電力公社の済州島の総責任者が来日し、大手公益事業者とミーティングも行っています。

V2Gの実証などは、日本国内ではなかなかできないことなので、その意味でも、日本企業の積極的な参加があってもいいのではないでしょうか。

 

Text by 本橋恵一(エネルギービジネスデザイン事務所)

※トップ画像 出典:KEPCO