アマモで海と暮らしを豊かに!「全国アマモサミット2023」現地レポート

2023.11.02 Update

エリマネ

アマモで海と暮らしを豊かに!「全国アマモサミット2023」現地レポート

福岡市で10月20〜22日、「全国アマモサミット2023 in ふくおか」が開催されました。全国アマモサミットは、海の自然再生・保全を目指した全国会議。海とともに地域を豊かにするために、漁業関係者や民間企業、地方自治体など多くの主体が協力して取り組むことを目指しています。さまざまな立場の意見が交わされたトークセッションの様子を現地からいち早くレポートします。

 

「アマモ」とは

そもそも、アマモとは海草(うみくさ)の一種で、ショウブのような細長い形状をしています。ノリやワカメ、コンブなどとは種類が異なり、根・茎・葉の区別があります。アマモは砂や泥の海底で育ち、いろいろな海の生き物のすみかになっています。しかし近年、海水温の上昇などによってアマモが消失するケースが散見されていますアマモがなくなると小魚などのすみかが失われるため、海の生物多様性に影響を与えると懸念されています。

 

「全国アマモサミット2023」トークセッション

「全国アマモサミット」は、海の自然再生・保全を目的とした全国会議で、2008年から各地で開催されています。今年は福岡市で開催され、博多湾のアマモを中心とした保全活動などについて、漁業関係者や学識者、ダイバーなどさまざまな立場によるトークセッションが開催されました。

 

漁業者の保全活動に加えて市民参加も重要

地元で半世紀にわたって漁業を営んできた福岡市漁業協同組合伊崎支所の半田孝之氏は「博多湾の環境を良くするには、土砂、水質、赤潮を適切に管理しなければなりません。漁業者の取り組みとして、県の海洋技術センターなどと協力して、プランクトンを食べる赤貝やアサリなどの放流、海底耕運、底びき網による海ごみの回収などを行っています。プランクトンを捕食する海の生き物が増えれば赤潮の被害が減るため、マコガレイの人工孵化をして繁殖を促しています」と述べました。

また、学生や市民とアマモ場作りに取り組んでいる九州大学名誉教授の川口栄男氏は「藻場の調査にはスキューバダイビングなどが必要なため、定期的なデータの収集が難しい側面があります。しかし、生態調査を踏まえて、適切な場所に適切な種類の海藻を植えて増やすことが重要。近年は、夏の高温によってアマモがダメージを受けることも考慮したアマモ場づくりが求められています。これまでにも、小学生がアマモの種子を海に投げ込む『アマモ種子団子』などの取り組みを行っていますが、市民参加による活動が大切です」と話しました。

 

海と私たちの暮らしはつながっている

続いて、国土交通省港湾局・港湾環境政策室長の青山紘悦氏は「アマモによるCO2吸収量であるブルーカーボンに国も意欲的に取り組んでおり、CO2吸収方法の確立と吸収量の算定方法の検討を進めています」と述べました。

最後に、「全国アマモサミット2023 in ふくおか」実行委員長で一般社団法人ふくおかFUNの代表理事である大神弘太朗氏が、ダイバー活動で撮影した博多湾の海中の様子を会場に投影しながら「水深2mの河口域には良質の砂があるが、少し深くなると『シルト』という泥質の砂になって質が下がります。漁業関係者の皆さんが行っている海の手入れを続けながら、海と関わる里海というあり方が大事です」と指摘しました。

大神氏は、市民が海と関わるにあたっては「まずは、魅力を知ることから。どんなに大きなプロジェクトでも、足元からできることを始めるのが大切です。私たちの生活と海は、側溝や川を介してつながっていることを意識してほしい」と強調しました。

 

ブルーカーボンの吸収・算定の方法確立に期待]

青山氏によると、国ではブルーカーボンのCO2吸収方法の確立や、CO2吸収量の算定方法について検討を進めているとのことです。こうした方法が確立されれば、ブルーカーボンの取り組みを拡大する追い風になるでしょう。今後は、こうした動向にも注目していきたいと思います。

制作:office SOTO 山下幸恵 Facebook