ゲームで学ぶSDGs

2018.06.06 Update

ワークショップ SDGs

ゲームで学ぶSDGs

最近、よく聞く言葉にSDGs(持続可能な開発目標)があります。これは2015年の国連サミットで採択された、17項目の目標で、もちろん気候変動問題も含まれていますが、その他にも貧困、ジェンダー、生物多様性などさまざまなテーマがあります。

そして、SDGsが何かわかったとして、自治体や企業は具体的な取組みをどうすればいいのかということまでは、なかなかわからないのではないでしょうか。

そこで、SDGsを理解するためのゲームがいくつか製作されています。

今回はその1つ、株式会社パズルステージとイーソリューション株式会社が開発した「SDGsゲーム自治体版」の体験イベントに参加させていただきました。

SDGsゲーム自治体版の概要

体験イベントが開催されたのは、4月20日。自治体の職員など二十数名がプレイしました。最初に、オリエンテーションから。

ゲームは、プレイヤーがいくつかのチームに分かれて行います。チームが1つの自治体という設定です。そして、資金や自然の資源などをもとに、政策を実施し、その結果、人口や資金が変化していきます。勝利条件は、人口を半減させないことです。

この日は、7チームに分かれました。チームの初期設定はそれぞれ異なっており、小規模自治体。中規模自治体、大規模自治体で、しかも小規模と中規模は観光・農業・エネルギーのそれぞれの特性を持っています。それぞれ、人口や資金、自然資源などの初期値が異なっています。

プレイは、5ターンで行われ、1ターンごとに、資金や自然資源を使って最大2つまでの政策を実施します。この政策は、政策カードになっており、ゲームのファシリテーターのところから政策カードを買って実施することになります。 どのような政策があるかというと、再エネや火力などの発電所の建設、リゾートマンションや道の駅の整備、食品加工工場の建設、介護福祉施設の建設など。欲しい政策カードが場に出ているとは限らないし、大規模自治体の場合は他自治体に投資してリターンを得る判断が重要になってきます。

政策による資金や人口などの精算は1ターンごとに行います。適切な政策をとらないと、人口はどんどん減少していきますし、とりわけ小規模自治体の減少は深刻です。

この日は、練習として3ターンをプレイしたあと、本番として5ターンプレイし、最後にワークショップを行いました。

持続可能な政策の意外性

ゲームをプレイして感じたことは、いくつかあります。

まず、政策のマイナス面を考慮しないといけないということです。人口に効果ある政策はエネルギーを必要とするとか、そういったことです。したがって、いくつかの政策をバランスをとりながら実施することになります。

また、ハコモノ政策のようなものは、マイナスの影響も大きいようです。エネルギー政策でいえば、発電所の建設よりも、断熱改修のような政策の方が、地味ですがメリットがありそうです。

そして、ゲームの勝利条件をクリアするためには、チーム間の交渉が不可欠だということです。自分の自治体だけで解決できない問題も、協力することで解決可能です。チーム内外のコミュニケーションが、とても大切なものとなってきます。

ちなみに、筆者のチームは、小規模で観光中心の自治体でしたが、練習プレイでは3ターンで人口が半分近く減ってしまいました。本番ではどうにか人口減少をかなり抑えることができましたが、それでも2割以上は減りました。

同じチームのメンバーは自治体職員の方々でしたが、よりリアルに感じたことでしょう。

 

ワークショップ

SDGsゲームは、あくまで自治体職員などの研修のために作製されたものです。したがって、ゲームの後のワークショップは欠かせません。この日は、筆者をイベントに誘ってくれた、一般社団法人地域政策デザインオフィスの田中信一郎さんが、ワークショップを行いました。 ここでは、ゲームを振り返りながら、持続可能な開発につながる政策について、まとめています。例えば、都市計画において、自家用車を使いやすくするか、徒歩圏に集中させるか。高齢化社会になっていくにしたがって、徒歩圏にさまざまな施設があることが、重要になってきます。また、それを促進するために、公共交通機関を整備するということも効果的でしょう。ヒートショックを防ぐための、住宅の熱効率の向上というのも、もっと促進されるべき政策だといえます。

スマートシティというと、ICT化のような政策が注目されがちですが、コンパクト化やこれに伴う熱供給など効率性の向上なども大切です。実際に、海外にはさまざまな事例があります。

さて、このSDGsゲームですが、ゲームそのものの販売はしていません。まず、ゲームのファシリテーターを自治体で育成していただき、その後ゲームを貸し出すことで、それぞれの地域でSDGsについて学べるようにしていきたいということです。また、スタッフが出張してゲームを実施することも可能ということです。

また、このゲームとは別に、企業向けのSDGsゲームも用意しているということです。

多くの自治体・企業では、環境問題への理解も進まないのに、SDGsはさらに広い概念となってくるので、戸惑っているのではないでしょうか。こうした中にあって、座学ではなく、ゲームを通じた実践的な研修で、「持続可能」であることについて学ぶのは、深い意義があると思いました。

 

Text by 本橋恵一(エネルギービジネスデザイン事務所)