働き方改革・健康経営の実現に向けて(WELL認証について)

2017.12.19 Update

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働き方改革・健康経営の実現に向けて(WELL認証について)

近年、国の方針として「働き方改革」が推進されているのに伴い、健康経営に注目する企業が増えてきました。従業員の健康が業績向上などをもたらし、健康のための投資が企業にとって必要なものであるという認識が徐々に広まってきているようです。
今回は、健康経営の施策の一つとして、人の健康に配慮した建物・室内環境及び業務運用の評価基準「WELL認証」についてご紹介します。

健康経営の一環として、GoogleやAmazonもオフィス整備に注力している

近年注目されている健康経営。経済産業省が健康経営に戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定するなど、国も推進の姿勢を見せています。
従業員が健康で働くことのメリットとして、「医療費の削減」と「生産性の向上」があげられます。
現代年々罹患者が増加している生活習慣病や精神疾患。定年引上げ等による勤労人口の高齢化。これらは、増大し続けている医療費の半額以上に影響しています。従業員の健康推進を行なって医療費増大に歯止めをかけられれば、企業の保険料負担も軽減させられることが考えられます。

(経済産業省より)

また、心身が健康でない状態で働き続けると労働生産性が下がるといわれています(プレゼンティーイズム)。従業員が健康に、高い生産性をもって働くことができるようになれば、離職の大きな原因となっている勤務時間の改善にもつながり、企業に対する満足度も高まります。健康経営による生産性の向上を通じて、離職率の低減も期待できるでしょう。

健康経営の取り組みの一つとして、オフィス環境の整備があります。勤務中、長時間にわたり滞在するオフィス環境の整備は、社員の健康および生産性向上の大きな要因の一つといえます。GoogleやAmazonなどの有名企業も、健康面に配慮したオフィスづくりを積極的に行なっています。
そこで今回は、健康経営の施策ともなりうる、健康に配慮した建物・室内環境及び業務運用の評価基準であるWELL認証についてご紹介します。

WELL認証は建物・室内環境及び業務運用を多様な観点で評価する

WELL認証とは、人間の健康や快適性・生産性の向上を目的にオフィスビルなどを評価する制度です。アメリカの不動産企業Delos社の創設者ポール・シャッラ氏の発案で、2014年に公益企業International WELL Building Institute(以下IWBI)より正式公開されました。ポール氏は、「人は生涯の約9割を建築空間内で過ごすとされる。そのため、建築空間は今よりもっと健康性、安全性、快適性に配慮すべきである」という考え方を提唱しています。
日本では(一社)グリーンビルディングジャパンが資料翻訳などで関わっており、徐々に国内企業に取り入れられる動きも出始めています。

プロジェクト類型

WELL認証には、建物の種類によって3つのプロジェクト類型があります。それぞれ必須項目と加点項目があり、必須項目をすべて満たすとシルバー、加点項目の達成状況によってゴールド、プラチナ認証となります。

(WELL認証ガイドブックより)

認証項目

認証項目には「空気」「水」「栄養」「光」「健康」「快適性」「こころ」の7つのカテゴリーがあります。空気質や水質など従業員に提供される環境の適正化から、運動機会や睡眠への配慮まで、項目は多岐にわたります。

(編集部作成)

認証手続き

WELL認証を受けるためには、書類審査とアセッサーによる現場評価をクリアしなければなりません。また、認証を受けた後も、3年に1度再認証を受ける必要があります。
WELL認証の手続きを進める企業の中には、担当者が認証プロセスの補助・支援をするための資格である「WELL AP(認定プロフェッショナル)」を取得するところもあります。2017年8月から日本語でも受験が可能となり、認証を後押しています。

(WELL認証ガイドブックより 編集部加筆)

90%以上が健康・ビジネスへの好影響を実感している

IWBIの調査によると、90%の従業員はオフィス環境が仕事の質に影響すると感じており、よいオフィスデザインだと業績が22%向上するといわれています。
また、世界で初のWELL認証を受けたCBRE Global Headquartersの社内調査によると、92%が健康によい効果、94%がビジネスによい効果があったとしています。また、93%が同僚と気軽に協働できるようになったとも回答しています。

上記のような室内生活の健康に関する研究や、各国の状況にあわせた評価基準の検討などを通してWELL認証取得を推進することを目的に、Delos社はWELL Living Labを設立しました。メイン企業にはDelos社の他、アメリカの病院ランキング1位といわれるMayo病院を迎えています。他に、現時点で19のアライアンス企業があり、日本からは清水建設が参加しています。


人間の健康に配慮した評価基準「WELL認証」について概要をご紹介しました。アメリカはじめ国外では導入及び効果実証が進んでおり、日本でも徐々に広まることが予想されます。
次回は、日本でWELL認証を導入するにはどのような課題があるか、またその対応策についてレポートします。

(文:スマートシティニュース編集部 篠原・高橋)