こだいらソーラー6号機・7号機運開、自治体と地域の協力が不可欠

2019.06.14 Update

再エネ 市民出資

こだいらソーラー6号機・7号機運開、自治体と地域の協力が不可欠

東京都小平市にある、NPO法人こだいらソーラーでは、ソーラー市民発電所の6号機と7号機を運開し、5月23日には開所式を開催しました。いずれも小さな太陽光発電所ですが、市民から資金を調達し、配当していく、そういった事業になっています。FITでの買取単価は18円/kWhですが、それでも事業が成り立つ背景には、自治体や地域の事業者の協力があります。

こだいらソーラーが設立されたのは2012年のこと。きっかけは2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故です。自分たちが使うエネルギーについて考え、地域の中に市民出資による太陽光発電所をつくることを進めてきました。1号機は2013年2月に発電を開始した、12kWの発電所です。その後、2016年5月に5号機が発電を開始し、発電容量は合計で75kWとなっています。

6号機と7号機の開所式の会場は、小川町1丁目地域センターで、武蔵野美術大学の近くです。集合場所である、西武国分寺線鷹の台駅から、小平ソーラー理事長の都甲公子さんの案内で、玉川上水沿いの緑道を気持ちよく歩いて、現地に向かうことができました(写真1)。

写真1

会場に着く前に、近くにある6号機をみんなで見学。障害者生活介護施設の屋根をお借りして設置されていますが、屋根が南向きの切妻屋根で、太陽光発電パネルを設置するのに理想的な場所でした(表紙写真、こだいらソーラー提供)。発電容量は16.2kW。3つの系統に分かれ、5.4kWのパワコンを通じて売電されています。なぜ、パワコンが3つかというと、非常時に施設で電気を使う場合を想定し、使いやすいように3つに分けたということです(写真2,3)。

写真2

写真3

 第7号は、この日は見ることができませんでしたが、小平市東部の花小金井の障害者グループホームに設置された、発電容量11kWの設備だそうです(写真4、こだいらソーラー提供)。

写真4

いずれも売電先は、特定卸供給というしくみで、地元のLPガス会社で、小売電力会社でもあるエネックスとなっています。

市民出資について、簡単に説明しておきましょう。これは、市民が資金を拠出して、太陽光発電をつくるしくみです。寄付と異なり、事業で得た利益から、出資者に返済(配当)していくというものになります(写真5)。

写真5

風力発電所のような大規模な事業では、金融取引業の資格を持つ事業者が、ファンドの募集をしていますが、こだいらソーラーのような小規模な団体の場合、疑似私募債という形で、いわゆる知人から出資を集める形で出資者を募集しています。これは、金融取引法の制約があるためだそうです。

6号機と7号機が、3年ぶりに新しい発電所として運転を開始したわけですが、この間に、適切な場所を探すために小平市とも話し合ってきました。そうした中、昨年5月に、3号機の設置場所を提供した社会福祉法人未来から申し出があり、事業計画を進めることができたということです。

また、この発電所では、2018年度の認定価格、18円/kWhで売電しています。小規模の設備で、なお低い価格で採算をとっていくことは、簡単ではなかったということですが、それでも出資者にはきちんと利子をつけて返済できる計画になったということです。

この日は、たまエンパワー社長の山川勇一郎さんからのレクチャー、および太陽住建総務部部長の近藤博史さんからの設備の説明などがありました。

山川さんからは、太陽光発電をめぐる状況として、メンテナンスのことや、設置コストの低下、自家消費型太陽光やPPAへの取組みとシュタットベルケの日本版(山川氏は板橋区の地域電力会社めぐる電気の取締役でもあります)といった内容が語られました。板橋区では小中学校の屋根を借りたPPA事業を行っており、6校では太陽光発電だけではなく蓄電池も併設しているということでした(写真6)。

 写真6

6号機の施工を行った太陽住建は、神奈川県を中心に活動していますが、市民発電を増やしたいという想いがあり、こだいらソーラーの太陽光発電の施工も担当しました。6号機を中心にお話いただきました。落雪を防ぐための雪止めを付けたこと、また、シミュレーションによると、6号機は年間21,500kWhの発電量が期待できるとのことですが、現在はこれを上回るペースということなどが紹介されました。

売電先であるエネックスの社長である榎本弘容さんからは、電気事業の意外な苦労も聞けました。LPガス事業では、お客様が引っ越すとときに、引っ越し先で自社のLPガスを使ってくれるということは想定していなかったのですが、電気の場合は、引っ越し先でも使ってもらえるので、営業の面から意識を変えていかないといけない、ということでした。

もちろん、エネックスから電気を買うことで、地元の人はこだいらソーラーの電気を使うことができる、ということになります。

こだいらソーラーの設備はそれぞれ売電先が異なり、生活クラブ生協やみんな電力に売電している設備もあるということです。

都甲さんによると、現在全国で1000を超える市民発電所があるということです(写真7)。地元のお金で設備をつくり、地元で電気を使う。発電所の規模としては小さいのですが、エネルギーの地産地消の未来に向けた取組みといえるでしょう。

写真7

Text by 本橋恵一(エネルギービジネスデザイン事務所)